2 新しい住宅双六

新住宅双六の条件

 さて、新しい住宅双六を描いてみよう。
 その王道は、ヨーロッパの福祉国家のように、老後福祉が整った便利な場所の賃貸住宅での暮らしだろう。なぜ賃貸かといえば、それは貴重な都心という環境を皆で分かち合うためだ。そして、必要に応じて家賃の公的な補助があり、住宅費の不安がないのが理想だ。

 とはいえ、このようなビジョンは遠い目標だ。あるいは、日本社会は、そのような老後の高福祉を目標としないかもしれない。あてにならない福祉を前提としていては、私たちの現実的な住宅選びを決めることはできない。

 まず、これからの住宅選びのポイントを整理してみよう。

@住宅の転売で儲けるチャンスは小さい

 人口減少の時代には、住宅の転売で儲けるという発送は通用しない。転売する時は、価格が下がることを織り込んで、住宅双六を描く必要がある。うまくいけば、立地が良いことで多少の価格上昇の幸運に恵まれるかもしれない。さらに、二〇一〇年に至る前に、一度はミニバブルがあるかもしれない。しかし、住宅ローンを帳消しにできるような大幅な地価上昇は無理だ。これからは、背伸びをした住宅ローンを組んで、将来の値上がりにかけるというカケは極めて危険だ。

A住宅双六の上がりが重要

 これからの新しい住宅双六の鍵は、老後不安の解消にある。それ故、双六の上がりが最も重要だ。その上がりの候補となるのが、便利な場所にある永住型のマンションか、あるいは、地域コミュニティがしっかりした良質な一戸建団地(親子同居住宅を含む)だろう。

 さて、そろそろ新しい住宅選びのストーリーを描いてみよう。まず、大きく一戸建派とマンション派に分けられる。

一戸建派の新しい住宅双六

 現在でも、庭付一戸建を理想とする人々は多い。そのような一戸建派は、ある時期になると郊外に庭付一戸建を購入する。ここまでは、従来のストーリーと一緒だ。違いはそれからあと老後にかけてだ。

@一戸建・同居ストーリー

 一つは、老後に子供と同居できる場合だ。家を改造したり、二世帯住宅などに建て替えて、そのまま安心して住み続けるというストーリーが描ける。

A一戸建・別居ストーリー

 もう一つは、別居の場合でも、良好な住宅地であるため、店舗や病院などができたり、地域のコミュニティ活動が成熟して、老後も住みやすい住宅地として価値を保つストーリーだ。近くに高齢者サービス施設などが導入されれば、安心感はさらに高まる。

Bマンション・住替えストーリー

 最後の選択は、老後になって庭付一戸建を売り払い、生活に便利なマンションに住み替えるというストーリーだ。この選択が、今後は増えるだろう。



一戸建派へのアドバイス

 さて、以上のようなストーリーがあるとしても、それは結果にすぎない。四〇歳前後で一戸建住宅を買う時点では、将来どのストーリーを歩むかわからないのが現状だ。そのような中で、何に着目して住宅を選べばよいのだろうか。

 基本姿勢は、もし子供と別居になっても不都合がないように、その地域の高齢化社会における将来性を十分に判断して買うということだ。

 将来性の基本は、自家用車を用いないでに生活できるかどうかである。店舗や病院ができ、公共交通がある程度整うならば将来性は大きいといってよい。さらに、高齢者施設が整備されれば、いうことはないだろう。このような住宅地ならば、老夫婦だけになっても安心して暮らせるし、住み替えるために売却することになっても、ある程度高く売れる。

 しかし、郊外住宅地の将来性を予測することは、そう簡単ではない。万一、見込み違いの時は、土地を購入しているため転売時の損失が大きい。特に、これから家を買う人々は、定年の節目にちょうど二〇一〇年の危機をまともに受ける。高齢化・少子化という未経験の状況だけに、将来性の判断は専門家でも自信がもてない。

 それならば、土地を買うのではなく、借りるという選択はどうだろうか。つまり、最近はやりの定期借地権だ。価格が安くなるため、余ったお金を老後資金に貯金できることがメリットだ。そして、もし地価が下がっても損失は少ない。

 三〇年ほど住んで、後は、便利な市街地のマンションに戻る。その時は、狭い面積でもよく、それまでの貯金によって住宅費の負担は可能だろう。

 結論はこうだ。もし、あなたの子供が同居する予定か、あるいは、その地域の将来性に自信があるならば、土地付きを買うと良いだろう。逆に、将来性に自信がなければ、定期借地権住宅を買って住宅費を抑えるというのが賢い選択である。

マンション派の住宅双六

 次は、マンション派だ。つまり、老後になって市街地に戻ってくるよりは、いっそのこと若い頃からずっとマンションに住み続けようとするストーリーだ。高齢化、少子化の中では、このストーリーが、もっとも増える可能性が高い。

 ただし、この場合も、現状では賃貸マンションに住み続けるのは難しい。老後の家賃負担が心配だからだ。ある時点で、持家か持家に近い性格をもつマンションを買う必要がある。その時に、どのようなマンションを選ぶかが悩みの種になる。

 ひと言でいえば、生活に便利な場所にある永住型のマンションだ。しかし、永住型とは具体的にはどんなマンションか。それに、そんなマンションは高くて買えないのではないか、と疑問は尽きない。

 そこで、マンションの問題を少し追求してみよう。



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